column コラム

警察を呼ばずに事故現場を離れたところ、後日、相手が、「自分は別の場所にいた」と言い出し、事故の当事者であることを争ってきた事例

2021/11/28

事故類型

1 四輪車vs自転車
2 信号のない交差点、出合頭、一時停止無視
3 物損
4 事故の当事者であることの否認


事案概要

住宅地内の信号のない交差点で、一時停止を無視した自転車が、四輪車の側面に突っ込んだ出合頭事故です。

自転車に乗っていたのは、朝、急いで学校に登校する途中の高校生(3年生、女子、知多半島有数の進学校の生徒)でした。

依頼者(女性、50代)は、高校生が、遅刻すると慌てていたため、その場では、お互いの連絡先を交換するに留め、警察には通報せず、事故の現場を離れてしまいました。

ところが、後日、高校生は、事故時、「自分は高校にいた、事故は起こしていない」と言い出し、自分が事故の当事者であることを否認してきました。


解決方法

依頼者は、幸い、事故の当日、自己の保険会社に、事故の詳細(相手の名前、電話番号等)を連絡していました。

また、当日、相手の親に連絡するため、相手の自宅固定電話に、電話をかけていました(ただし、電話に出たのは、当の高校生)。

そこで、当職は、保険会社からは、受付記録を、通信会社からは、通話記録を取り寄せ、依頼者の話が、こうした固い証拠(第三者作成の業務記録)からも裏付けられることを確認しました。

これまで、まったく面識のなかった大人と高校生が、事故が無いのに、お互いの名前や電話番号を知っていたり、たまたまその日に、大人が高校生の自宅固定電話に電話をかけることなど、無いことは、誰が考えても、わかります。

その後、当職が、高校生の親(母親)に連絡して、証拠についても、説明しましたが、親は、「うちの子は、そんな子じゃありません!!」と怒鳴り散らし、意見を変えませんでした。

このため、やむなく、提訴をしました。訴訟となった後も、高校生とその親は、弁護士を付けて、最後まで、事故の当事者性を争ってきました。


結果

裁判所の心証はクロで、通常の過失割合より、高校生側(自転車側)に不利な内容の和解案が出されました。

和解案を双方が受諾し、事件は終了しました。

その後、高校生側から、和解金が当職の預り金口座に振り込まれましたが、振込人の名義は、損害保険会社名義でした。

被告は、自分は事故を起こしていないと、裁判になっても争い続けていましたが、裏では、ちゃっかり、自分が事故を起こしたことを前提に、保険を利用していたようです。

被告が、金銭的には、通常より不利な内容の和解案をすんなり受諾したのも、保険を使うなら、金額は、関係ないからでしょう。

本人のみならず、こうした本人の不誠実な行動に加担する被告側保険会社と、その担当弁護士も、どうかしています。あり得ない話のようですが、こうした本人や、弁護士がいるのも、現実です。


弁護士より一言

本件では、依頼者が、事故直後に、保険会社に詳細を連絡していたため、固い証拠が確保できました。

しかし、直後の警察への通報があれば、このような争いが生じること自体、なかったはずです。

事故が発生したら、物損であっても、相手が急いでいても、警察に通報しましょう。

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