コロナ禍による外出自粛により、通院が途絶えた事例
事故類型
1 四輪車vs四輪車
2 店舗駐車場、逆突
3 物損、人損
4 コロナ禍、通院自粛、症状固定日
事案概要
2020年2月に起きた、店舗(コンビニ)駐車場内での逆突事故です。
依頼者(30代、男性)は、事故により、足首と首を捻挫し、整形外科に通院をしました。
ところが、当時は、新型コロナによる、社会の激変期でした。中国武漢からの政府チャーター機による邦人の緊急帰国の開始は、1月29日、新型コロナの指定感染症への指定日は、2月1日です。3月2日からは、小中学校の臨時休校が始まり、4月7日には、7都府県に緊急事態宣言が発令され、同月16日には、同宣言の対象地域が、全国47都道府県に拡大されました。
このような社会情勢の下、依頼者は、痛みは、6月まで続きましたが、通院については、3月の通院を最後に、痛みを我慢して、通院を自粛をしてしまいました。
その後、同年8月に、加害者側保険会社から、依頼者の下に、示談案が届きました。しかし、その内容は、依頼者の傷害が、3月の通院最終日で完治していた場合と、同じ内容のものでした。
解決方法
依頼者は、4月末に、加害者側保険会社からの現状確認電話に対し、①痛み残存、②通院はコロナにより自粛、と回答していました。また、通院の最終月分の3月分の診断書の記載内容を見ても、最終通院日現在では、「痛みあり」となっており、飲み薬と湿布が継続処方されていました。
本件の争点は、依頼者の「症状固定」の時期(症状に変化が乏しくなった時期)です。通常は、通院の最終日(本件では、3月)が、症状固定日と判断されることが多いですが、コロナ自粛により、予定していた通院が、中途で途絶してしまっている場合は、どの日を症状固定日と考えれば良いのでしょうか?
そこで、当職が受任し、同社との間で、症状固定日を、4~6月の間のどこかの時点とすることで、折り合うことができないか、交渉を行いました。
しかし、同社が、症状固定日は3月との主張を変えなかったため、前例がない事案でもあり、やむなく訴訟を提起し、裁判所の判断を仰ぐことにしました。
結果
残念ながら、裁判所から出された和解案は、3月を症状固定日とする和解案でした。
ただし、具体的な金額については、算定基準が、保険会社基準から、裁判基準に変更になり、通院日数が、数日間しかない事案としては、かなりの増額にはなっている案ではあっため、やむなく裁判所和解案を受け容れ、事件終了となりました。
弁護士より一言
裁判所は、「診断書」という、①医師による、②書面を、重視することが多いです。
交通事故被害者である本人が、症状は、この時期まで、こうだった、などと詳細に説明しても、立証が足りていないとして、主張が排斥されてしまうことが、(残念ながら)あります。
症状固定までの間は、仮にコロナ自粛をしていても、月に1度は、医師による診察を受けるようにしましょう。